2011年2月8日
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【はじめにより】
高校2年生にもなると、誰もが自分の行く末について真剣に考える。
「これからどうやって生きていこう。いったい全体どういう仕事に就こう──」
悩みは本当に尽きないはずだ。不肖ボクにもそんな経験がある。というか、大学時代もそうだったし、社会人になってからもそうだった。
将来について思い悩んだ時に参考になるものがある。偉大な人物が自分と同じ歳の頃にどういうふうに過ごしていたのか、その後どう生きたのかについて知ることだ。
では、17歳の頃、あの知の巨人ピーター・ドラッカーは何をしていたのか。
ドラッカーはちょうど17歳のときに、ギムナジウムを卒業して、生まれ故郷のウィーンを離れる。ドラッカーは退屈なウィーンから脱出したかったからだ。
向かった先はドイツ北部の商都ハンブルクだ。ここでドラッカーは綿製品を扱う貿易商社の見習いになる。同時にハンブルク大学の法学部に入学した。
ドラッカーは当時の自分のことを次のように語っている。
当時の私は、何になろうとしているのかさえ分かっていませんでした。分かっていることは、綿製品の商人として成功することはありえないということだけでした。18歳の青年としては未熟な方でした。何の経験もなく、何の実績もありません。 (創生の時)
いまでこそドラッカーは偉人の一人に数えられている。「経営の神様」「マネジメントを発明した男」「マネジメント・グル」「日本画コレクター」などなど、多様な呼称をもつことでも有名だった。
しかし、そんな人物でも、多感な10代後半は、暗中模索の時期だった。何をしていいのかわからなかった。たぶんこの気分は、この本を手にとってくれている多くの人が、共有するものではないだろうか。実は右の言葉には続きがある。
私が何を得意にし、何をすべきであるかを知ったのは、その一五年も後の三〇代初めになってからのことです。(創生の時)
自分が何をすべきか知るには時間が必要だ。ドラッカーも悩んだ。悩んだ末にようやくわかったのが30代になってから、ということだ。
だから、仮にキミが17歳だとしたら、自分が何をすべきか、いまは答えが出なくても大丈夫だ。焦る必要はまったくない。ドラッカーもそうだった。
でもそれは、自分が何をすべきかを考えないでよい、ということではない。
自分は何者なのか。何をすべきなのか。これからどう生きるべきなのか。
こうした問いは常に自問していなければならない。でないと、いつまでたっても自分が何をすべきか見つけられない。
そして本書は、キミたちがこれらについて考える材料を提供するために書かれたものだ。もちろんそこにはドラッカーの思想をふんだんにちりばめた。
結論から言うと、ドラッカーがキミたちに贈るメッセージは次の二点に集約できる。
「できないことではなく、できることに注目せよ」
「目標管理(目標によるマネジメント)を実践せよ」 (ドラッカー20世紀を生きて)
実際ドラッカーは、この二つを生涯実践した。また、ことあるごとに両者の重要性を説いた。言うならば、この二つの実践により、ドラッカーはドラッカーになった。「何になろうとしているのかさえわからなかった」という自分にケリをつけた。
本書では、これら二つのことはもちろんのこと、ドラッカーがその生涯で述べてきたことを念頭に、キミたちの仕事やお金のこと、さらには日本の将来について書いてある。
著者としては、キミたちが自分の将来について考えるきっかけに、本書がなれることを切に願っている。キミたちに、昨日とは違う一歩を踏み出してもらいたいと思っている。
そして、本当にそうなったとしたら、著者冥利に尽きるというものだ。
なぜなら、それが本書の使命に他ならないからだ。
【目次】
PART1 「いま勉強しておかないと将来大変になる」って本当なのか?
PART2 仕事の目的は「お金」か、「やりがい」か?
PART3 「目標をもって生きること」ってそんなに大切なことなのか?
PART4 どうして思うように成果が出ないんだろう
PART5 未来の日本と世界はどう変わっていくんだろう?
【書評】
産経新聞 2011年2月27日 朝刊
