2011年3月21日
【あとがきより】
本書は、2010年10月から11年3月にかけて、日経BP社が運営するWebサイト「PC Online」で連載した「A4一枚でまとめるビジネス文書の極意」を書籍化したものだ。
私事ながら、この連載の原稿を書き終えてしばらくして、当方宛にある企業の方から、とある取材の依頼があった。メールには取材の趣旨が簡潔に記してある。詳細は添付のWord文書を見てもらいたいとのことだ。
文書を開いてみた。標準スタイルの文字がベタ打ちされている。よくあるWordの文書だ。
ただし、読み手である当方に配慮してくださっているのか、前置きの文章と取材内容詳細の間には、罫線が引かれている。これは1-12で紹介した考え方に従うものだ。
もっとも、Wordがもつ罫線機能を使ったのではなく、キャラクターの「-(ハイフン)」を1行一杯に入力したものであったが──。このあたりはメールにおける文章の習慣がWord文書にも押し寄せているせいなのかもしれない。
ま、私はA4一枚主義者を標榜するけれど、「-」を使った罫線でも一向に構わない。私が書く文書ならば「-」の罫線は使わないけれど、よそ様が作った文書だ。いちいち目くじらをたててもしようがない。
とはいえ、この文書にはA4一枚主義者でなくても仰天するような個所があった。
「どうせ1行だけ2ページ目にあふれていたのだろう」と思われるかもしれない。なるほど。確かにそのような文書だとしたら、本書の「あとがき」にはうってつけのサンプルになろう。
しかし実際はそうではなかった。
今回いただいた文書では、2ページ目の4分の3くらいまでテキストで埋まっていた。だから、これを無理矢理1枚に詰め込む必要もないだろう。(もっとも、本書を読んだ皆さんならば、この程度を1枚に押し込めないようではA4一枚主義落第である。)
注目すべきは、「以上です。どうぞよろしくお願いします。」で締めくくられた文末以降だ。
なぜか無意味な改行が重ねてあって、それが3ページ目まで続いていた。結果、2ページで済む文書が3ページになっている。
改行を重ねた末尾に何か秘密の言葉でも入力してあるのかと思い確かめもした。しかし何も書いていない。3ページ目はまったくの白紙である。
いや〜、これには驚いた。
文書作成者の意図はいったい何なんだろう。事務所のA4用紙を無駄遣いさせる魂胆なのか。こう考えつつ、「もっと早くに入手していたら、本書のネタにできたのに」という思いもよぎる。
いや、待てよ。この文書を数ヶ月前に入手していたとしてもネタに使えただろうか。仮にネタとして用いたとしても「無意味な改行はよそう」で話は終わってしまう。これで連載1回分をもたせるのは不可能だ。
しかし、このような“貴重な”文書をこのまま反故にするのはあまりにも惜しい。
ということで、いただいた文書は、この「あとがき」のネタに使わせてもらうことになった次第である。「1行だけ2ページ目にあふれた文書」よりもインパクトの大きい文書をグッドタイミングで送ってくださった取材依頼主の方に、この場を借りてお礼を申し上げたい。誠にありがとうございました。
もっとも、本書を読まれた方は、間違っても「無意味な改行で2ページにまたがった文書」など作ってはいけない。A4一枚でビシッときめること。これがA4一枚主義の心意気なのである。
【目次】
Part 1 A4一枚 スマートなビジネス文書の定番ワザ
Part 2 文書の魅力度はこうしてアップさせる
Part 3 書式スタイルとグリッドを熟知する
Part 4 図表の扱いをとことん極める
Part 5 ビジュアル系ワンシート文書を作る
Part 6 作業効率化の知恵とトラブルシューティング