2025年1月9日 

本書は祥伝社から出版された『幻の五大美術館と明治の実業家たち』に加筆修正し、さらに図版を180点以上追加した、ちょうど10年ぶりの改訂増補版です。
明治時代に活躍した実業家の中には、美術作品をこよなく愛した人物が多数存在しました。例えば、三菱の創業者・岩崎弥太郎の実弟・弥之助とその息子・小弥太、「鉄道王」の異名をもつ根津嘉一郎、野村證券創業者・野村徳七らはその一例です。彼らが蒐集したコレクションはそれぞれが「静嘉堂文庫美術館」、「根津美術館」、「野村美術館」として現在にも受け継がれています
しかし、実業家の中には、国宝級の作品を含む白眉のコレクションを作ったにもかかわらず、いまや作品があちこちに散逸してしまったケースもあります。仮にこれらのコレクションが現代に受け継がれているとしたら、日本を代表する美術館になっていたことでしょう。
本書ではこのような美術館を「幻の美術館」と呼びます。そして本書では、この世に存在あるいは存続できなかった美術館についてその事績をたどり、美術館が実現していた場合の姿をわずかながらでも伝えることを目的にしました。
取り上げる幻の美術館は次の五館です。

一 大茶人益田孝の「鈍翁美術館」
二 生糸王原三溪の「三溪美術館」
三 川崎造船所創業者・川崎正蔵の「川崎美術館」
四 株式会社川崎造船所初代社長・松下幸次郞の「共楽美術館」
五 美術商林忠正の「近代西洋美術館」

彼らが実業家としてどのような道を歩み、いかなる美術品を蒐集したのか、ぜひとも本書にてご確認ください。そのコレクションの質と量にきっと驚かれるに違いありません。

【内容紹介】より


【目次】
プロローグ
第一章 大茶人益田孝と小田原掃雲台「鈍翁美術館」
第二章 生糸王原富太郎と横浜三之谷「三溪美術館」
第三章 造船王川崎正蔵と神戸布引「川崎美術館」
第四章 勝負師松方幸次郎と東京麻布「共楽美術館」
第五章 美術商林忠正と東京銀座「近代西洋美術館」
エピローグ